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クライミングシューズ解剖学 vol.1 〈SKWAMAスクワマ

OUTLINE

はじめに

LA SPORTIVAに関わる識者によるシューズブログ「FOR OUR MOUNTAIN」。
今回より、福岡のボルダリングジムオーナーであり、LA SPORTIVAのセールスレップでもある<クライミング博士>こと小川慶士氏による【クライミングシューズ解剖学】を連載形式でスタート。
まず第一弾としてLA SPORTIVAの看板モデル「SKWAMA」の徹底解剖をお送りします!


SKWAMA
スクワマ

SKWAMA
スクワマ

アッパー スエードレザー +マイクロファイバー
サイズ Vibram XS GRIP 2 3.5mm
ソール 36~46(ハーフサイズあり)
重さ(1/2ペア) 約240g
生産国 イタリア
テクノロジー P3 SYSTEMS-HEELVIBRAM XS GRIP2

「岩でもジムでも使える」オールラウンダー

2016年の発売開始時は「ブラック/イエロー」のみだったSKWAMAは、2018年には「WOMANモデル」、2020年には「ブラック/ポピー」、2022年には「VEGAN」「VEGAN WOMAN」とチョイスの幅が広がり、現在のラインナップの中で最も愛されているモデルといっても過言ではない。

「ターンインが強過ぎないラストを使用し」「硬過ぎず」「柔らか過ぎず」「足馴染みがよく」「岩でもジムでも使える」オールラウンダーである。

そこで今回は、この人気モデル「SKWAMA」を掘り下げてみよう。

「蛇」の流れを汲んだモデル

まずはモデル名の「SKWAMA」だが、イタリア語の女性名詞「squama」から発想を得ていると思われる。ずばり「鱗(うろこ)」という意味だ。
発売当時のコンセプトも「It fits like skin , It protects like a scale(皮膚のようにフィットし、スケールのように保護する)」とある。

製品にも各所に鱗を連想させる幾何学模様が施されている。

1980年代「TEMPTATION」「BALLERINA」といった当時としてはかなり挑戦的なモデルからスタートしたスポルティバのスリッパモデル達の中でも「VIPER」「COBRA」「VENOM」「PYTHON」等、印象が強いモデルには蛇にまつわるネーミングが多い。

そう「SKWAMA」もこの「蛇」の流れを汲んだモデルだと認識してよいと思う。

では、その構造に迫ってみよう。

[構造]をリアル解剖

アウトソール、ヒールカップ、ミッドソール、スリングショット、ランドラバーを剝がしてみて最初に気が付くのは「しっかりとダウントウしている」事である。
仕上がった製品を見ると「緩やかなダウントウ」という印象だが、何も貼り付けないアッパーそのままの段階ではつま先が大きく下を向いているのがお判りいただけると思う。
これが、しっかり指先で掻き込めることにつながっている。

このアッパーに最初に取り付けられるのが、「LaspoFlex」と呼ばれる0.8mmのミッドソールなのだが、実は爪先から踵までフルレングスの物が入っている。

次に付くのがランドラバー、これの「厚み、大きさ、ソール側への巻き込みの量」でクライミングシューズの性格は大きく変わるところが面白い。
そして現行品番ではおそらく唯一、ランドラバーの更に内側に補強のラバーが付いているのも特徴的だ。

[ヒールカップ]は「S-HEEL」を採用

その次は、ヒールカップ。
このモデルでは初めて「S-HEEL」が採用されている。この「S-HEEL」ただのワンピースのヒールカップに見えるが、実はカップの上下部分は非常にソフトでそれ以外はかなり硬めに作られている。それゆえ横方向に簡単につぶれる事がないため、フッキングの制度向上に役立っている。(が、ここは好き嫌いが分かれる部分)

[S-HEEL]について >

「P3」の心臓部[スリングショット]

そして、いよいよスリングショットの貼り付けへと進むのだが、ここがこの製品最大のセールスポイント「P3」の心臓部である。

[P3]について >

「SKWAMA」のスリングショットは、土踏まずの内側からスタートし、踵をグルっと回って爪先側へ進んでくるのだが、ただ沿わせるだけでは爪先までは届かない。そう、貼り付けの際に爪先に届くまでテンションをかけているのだ。
つまり貼り付けた後は爪先側が常に後ろに引っ張られている状態になるため、シューズのシェイプが崩れにくい事につながる。

個人的にはスポルティバの「セパレートアウトソールモデル」は、「フレックス(※1)とトーション(※2)」の味付けが肝だと感じているが、それはこのスリングショットの貼り方が大きく寄与している。シューズの爪先と踵を持って「靴を折り曲げて感じる全体のフレックス」と「捻じってみて感じるトーション」は、スタンスへの入力の大きなポイントとなる。(色々な靴で感じてみてほしい)

※1:靴の柔軟性
※2:中足部のねじれをコントロールして足の安定性を向上させる機能

それから、トウラバーの貼り付け。
非常にソフトで薄い物を使用しているため、フッキング性能向上につながっている。

アウトソールに大きな「穴」があるわけ

最後にアウトソール。ご存知のように、「SKWAMA」のアウトソールには大きな穴が開いている。

アウトソールに弱いところを作る事で、体重を乗せた際のアウトソールの変形が早くなり接地面への順応性が増す仕組みだ。
(実は、サンプル段階ではこの穴、完全にアウトソール後端まで切れていた。製品発売までの短い期間で現在の形にアップデートされた事になる。
(クライミングシューズに限らずスポルティバのシューズはサンプル製作の後もテストが続き、発売までの間に改良が入る事が多く、このブランドの心意気を感じる)私は、最初に購入した物はサンプルと同じようにアウトソールをカットして使ってみたが、力が逃げる感じがして使えなかった。)

アッパーにスエードとマイクロファイバーを使用した「SKWAMA」「SKWAMA WOMAN」に対し、急速に増え続けているヴィーガンの方々の要望に応えて生まれた「SKWAMA VEGAN」「SKWAMA VEGAN WOMAN」。


SKWAMA VEGAN
スクワマ ヴィーガン

SKWAMA VEGAN
スクワマ ヴィーガン

アッパー 3層マイクロファイバー
サイズ Vibram XS GRIP 2 3.5mm
ソール 36~46(ハーフサイズあり)
重さ(1/2ペア) 約230g
生産国 イタリア
テクノロジー P3 SYSTEMS-HEELVIBRAM XS GRIP2 / VEGAN FRIENDRY

この「VEGAN」はアッパーにもマイクロファイバーのみを使用しているが、そこにも工夫はある。皮革の構造からヒントを得て厚さの違うマイクロファイバーの間に通気性のあるコネクションレイヤーを挟んだ物を使用している。
「VEGANモデル」の方が、伸びが小さくカッチリとした印象だ。

ヒールカップの構造は双方で変わりはないが、「VEGANモデル」の方が若干ソフトな印象を受ける。(個人的には、こちらの方が好み)

おわりに

今夏、パリ五輪男子B&Lにて銀メダルを獲得した安楽宙斗選手や女子B&Lで銀メダルを獲得したブルック・ラバトウ選手など多くのトップクライマーから支持される本モデル。しかし決してトップクライマー専用ではなく、あらゆるクライマーのパフォーマンスを最大化させるべく計算され尽くした緻密な設計がされていることがお分かりいただけたのではないでしょうか。

WRITTER

小川 慶士 Keiji Ogawa

福岡県博多のボルダリングジムオーナーでもありLA SPORTIVA JAPANのセールスレップを勤める。
LA SPORTIVAだけでなくクライミングシューズ全般に精通し、注目のシューズはちょっと履いたらすぐ分解。そのさまから社内では「博士」の愛称を持つ。

PRODUCTS INFORMATION

SKWAMA

SKWAMA
スクワマ

様々なホールドを捉える革新的なソール形状

SKWAMA WOMAN
スクワマ ウーマン

SKWAMA WOMEN'S モデル