LA SPORTIVA JAPAN OFFICIAL BLOG
LA SPORTIVAに関わる識者によるシューズブログ「FOR OUR MOUNTAIN」。
今回は、LA SPORTIVA JAPANスタッフ片野太一による遠征記録後編をお送りします。
太陽が出てくるのを見計らってテントを出る。偵察時にギアをデポしたお陰で取付まで小1時間のアプローチだ。
第一バンドまでは、上部が露岩しているものの大方ガレ場歩き。ロープは不要だった。ただし雨が降れば露岩のスラブが滑るので、懸垂も視野に入れておかねばならない。
バンドから右手にある逆くの字状のクラックの下からロープを付けクライミングシューズに履き替える。
出だしは濡れたコーナー。右壁スラブのスタンスを拾いながらレイバック気味にグイグイ進む。ランナーはカム。25m程進むと両足で立てる位の小テラスに出る。
そのままクラックは上に続いているが下部より本格的に濡れている。
回りこもうとするが、良いクラックラインに合流するまでに良いプロテクションが取れない。小テラスに戻り、クラック左側の白いスラブ状のフェイスへ出て直上を選択。硬いがホールドが甘くバランシーな登攀を強いられる。ランナーもろくに取れない緊張した登りが15m程続き、アングルが打ててホッと一息。おまけに酸素の薄い登攀なのでワンムーブ起こす度に息が荒くなる。
くの字上部は不安定な岩が堆積してそうで左から回り込む。立ったハンドクラックを越えると傾斜が落ち着き第二バンドへ出る。
白壁の弱点を縫う様にして左上していく。難しくはないが一枚岩のスラブは硬くそして美しい。頭上に偵察時にも目立っていた洞窟状ルンゼまで辿り着く。
ルンゼへ進入してすぐの所で、ピッチを切った。
ルンゼを抜け出し、階段状の草付きスラブを進む。前半より登りやすくなってきたが、傾斜があまり無い分浮石のロープドラックに気を遣う。
空が大分近づいてきた。抜けられる可能性を感じもう1ピッチ伸ばす。堆積物が比較的少ないライン取りで、浮石をクリーニングしながら登るとガレのテラスに出る。後ろを振り向くとアクサイ氷河、クライマーズレフトに南東面ガレが見えた。恐らく上部で北東壁と合流しているのだろう。
最終ピッチ終了点からコンテに切り替えて荒々しい岩稜帯を進む。時々大きめの岩がグラついて恐ろしい。顕著なピナクルに登り詰めるとそこは前衛峰の一番高い場所だった。
下降は5P目終了点から同ルートを5ピッチの懸垂下降。最低限ハーケンと捨て縄で下降点を構築した。17:00過ぎにテント場に戻ると冷たい雨が降り出す。
今日は待ちに待った終日晴れの日。そしてFirst try時に、テントで療養していた金坂も調子を取り戻し、満を持して3人で登攀。もう1つ目星をつけていた、第一バンドの左端のクラックフェイスから取り付く。
出だしのクラックが垂壁になっており短いながら楽しい。後はロープ一杯までスラブの歩き。スラブ面はクラックに乏しくハーケンでビレイ。
白壁スラブを斜上して前回登った洞窟状ルンゼに合流。
ビレイ点から目を凝らすと薄被りの凹角のクラックを見つけた。それは青空に向かって真っすぐ伸びている。ここを選ばずにどこに登るのだ。ビビっと来た直感に従い、凹角の根本までロープを伸ばす。
用心してせり出した凹角クラックに取り掛かる。
出だしの階段状は浮石が至る所にあり、スタンスを慎重に選ぶ。凹角は硬いハンド〜フィンガーサイズのクラックが走っている。これは当たりだ!
要所要所にガバやステミングしやすいスタンスもあり、グングン高度を稼ぐ。
クラックセクションを越えると間髪入れず煙突岩(仮称)が現れる。偵察の時にも見えていたスカイラインから飛び出している岩塔だ。
これを越えたら岩稜帯へ出られるか?山田にリードを託し煙突岩にかかる。岩は15m程だが垂壁で手がかりがパッと見乏しい。初っ端からホールドが少ない上中々の露出感。
山田はガバを掴み足ブラからの引き付け豪快ムーブ。プッシュで一気に上体を起こし一段上に上がる。その後凹状フェイスも浮石をケアしつつ慎重に登る。
抜けると先日の最終ピッチ終了点のテラスに出た。
終盤の岩稜はコンテで進み全員で山頂を踏んだ。
前回下降に使った支点を使いながら懸垂で取付きへ。テントに着くとほっとしたのか、頭痛でノックアウト。同時に安堵感も湧いてくる。
無事に2ルート登り終えた僕たちは10日間のBC生活に終わりを告げ、ビールとラグマンが待つ街に向かって降りる。登りは苦悶の行進であったが帰りは身も心も軽い。1日で登山口まで戻ってこられた。
下山する道中も、気になる壁やクラックはそこら中にあり何度も足が止まってしまう。
山行中に見つけた興味深い壁もある。半月で終えてしまうには惜しい場所だ。
国内のトレーニングから使用しています。クラックに捻じ込んでハードに使い込んでも
安心な耐久性を備えています。
本番の登攀でも使用。クライミングから岩稜帯の歩きまで全てこの一足でこなしました。
一日中履いていてもストレスは少なく、足元の余計な心配は要らなので登攀に集中できます。クライミング中もスラブからクラックまで幅広いシーンで対応して頼もしい靴です。
ベースキャンプまでのアプローチで使用しました。40kgを越える重荷を担ぐ事と、岩場での安定性の両方を考えた時にTX4EVOMIDを選びました。EVOに生まれ変わってソールパターンが菱形のラグになりました。
旧モデルよりも外傾した岩や渡渉の濡れた所でもグリップ力を発揮してくれます。
また、GORETEXメンブレンが使われているので、ぬかるみの多いアプローチでも躊躇なく一歩が出せます。
日本用品スポルティバジャパン・ディビジョン
東京生まれのweek end山屋。
幼少の頃よりボーイスカウトで週末はキャンプ。登山を始めたのは自然の成り行きだった。大学探検部により本格的に山にのめりこむ。ノルウェーの大滝や洋上岩塔など興味の赴くままに登っている。