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マウンテンアクティビティに挑む女性の姿を通して、厳しくも美しい山、その自然に向き合う飾らない素顔をリアルに描くシリーズ。スポルティバのシューズが足元から安心感と高揚感をもたらし、女性のトライを後押しする。
今回のマウンテンアクティビティは日帰り登山。「TX4 EVO」を履いて、夏から秋へと移り変わろうとする南アルプス北部の岩稜の山・栗沢山を目指す。登山を楽しむPediさん、せみさん、スポルティバの清水さんとともに歩いてきた。
まだまだ暑さの余韻を残す9月初旬。この日はぐっと気温が下がり、早朝の山麓は肌寒い。バスの終着地点である北沢峠に降り立つと、思わずジャケットを羽織ってしまうほど。秋がようやくやってきたのだ。
今回は北沢峠を起点に栗沢山を周回する。美しいシラビソの森のなかを歩き、見晴らしのいい仙水峠へ出ると、そこから先は急登が続く。ゴツゴツとした岩場が目立ちはじめれば栗沢山は目前。日帰りで歩けるコンパクトな周回ルートながら樹林から岩稜、南アルプス北部の眺望まで楽しめる、魅力の詰まった山域だ。
山歩きのパートナーにはスポルティバの「TX4 EVO」をチョイス。本来はクライミングの際、岩場まで向かうときに履くアプロ―チシューズとしてつくられたモデルだが、じつは岩稜を含む日帰り登山にちょうどいい一足でもある。
岩場に対するグリップ性の高さはさることながら、ローカットゆえの足首の自由さが歩行を軽快にする。さらにアプローチシューズゆずりの爪先から足首までのフィット感も歩行の安定性につながり岩場歩きでは安心だ。
長衛小屋の分岐から仙水峠方面へと向かう。沢沿いを歩き進めれば美しいシラビソ林へと誘われる。
「八ヶ岳の森みたい!」
苔むした森を前に、彼女たちはうれしそうに声を上げる。そう、南アルプスは少し歩けば豊かな森に出合うことができるのだ。とくに北沢峠はバスを降りてすぐ、樹林帯のなかに入ることができるので気軽に森の散策が楽しめる好スポットだ。
緑豊かな森と沢のせせらぎ、青々とした苔。徐々に陽が昇り、深い森のなかに木漏れ日が射し込む。遅れをとりながらも、森がよりいっそう、いきいきと華やぐ朝がやってきた。
鮮やかに煌めく水面を眺める。足元に目をやると発色のよい白さが際立つ。今シーズンの新色だ。
スエードレザーを纏ったシューズは水にも強く少しの濡れなら問題ない。水溜まりなどのちょっとした水場でも気を遣わずに歩けるのもいいところだ。ソールは濡れた路面にも強く、滑りにくい。
沢沿いから離れてシラビソの森の中核へ。登山道を囲うように立ち並ぶ木々が、陽の光によって白みを帯びる。森と天候がつくりだす幻想的な時間だ。
徐々に変化するドラマチックな情景に笑顔がほころぶ。森も天候も、いっときとして同じ時はない。万物はつねに移ろいゆく。だからこそ、自然は美しい。
森のなかのぽっかりと抜けた空間で、バックパックを置いてひと休み。居心地のいい森でゆっくり腰を下ろし、たわいもない話をするのも心地よい時間だ。
平坦な登山道から緩やかな登り坂へと変わるころ、シラビソの森から少しずつ植生も移り変わる。トレイルの両脇にはシャクナゲが目立つようになり、まるでトンネルのように登山道を囲い、勢いよく茂る。
花の咲くころはきっと華やぐに違いないが、常緑樹の青さが瑞々しく目に映るこの季節も悪くない。
真っ白な地衣類が地面を覆う。赤みを帯びてきた草木と、まだまだ夏の面影を残す緑。多彩な自然の色が見られるのも、この季節ならでは。この森ならでは。
仙水峠に出ると三差路になり、栗沢山を指す先には巨岩が積み上がっている。ついに岩登りが始まる。
「TX4 EVO」のソールにはビブラムのメガグリップを使っている。岩にしっかりとグリップし滑りにくいので歩行も安心。リズミカルに登ってゆく。
岩場を登りきると、ふたたび樹林のなかへと入る。今度は急な坂が続く、なかなかハードなトレイルだ。だけど日帰りなので荷物も軽いし足元も軽快。歩きながらも会話に花が咲き、登りのつらさも忘れるほど。みんなで登れば山登りはいつだって楽しい。
空を覆っていた樹林帯を抜け、眺望のいいハイマツ帯に出た。うしろを振り返ると甲斐駒ヶ岳と摩利支天が目の前にそびえる。こんなに大きく眺められる場所は他にあるだろうか。もしかしたら、知る人ぞ知る甲斐駒ヶ岳の絶景スポットかもしれない。
急な登り坂が続くハイマツ帯をすぎ、山頂直下の巨岩帯へ。岩に乗り込むなど、少しアスレチックな要素も増えてくる。慎重に登りながらもシューズへの信頼感があるから、思いきって体重を預けられる。
「おーい! 山頂はすぐそこだよ!」
「早い! もう着いた~」
登山道の上空に広がった青空のように、彼女たちの表情もぱっと明るくなる。長かった登り坂も、これでおしまいだ。
遮るものはなにひとつない、天空の岩場。ぐるっと一周、大パノラマ。すべてをよく見渡せるすばらしい絶景が山頂には広がっていた。
「あそこに見えるのはオベリスクかな? いつか登ってみたい!」
「甲斐駒ヶ岳の向こう側に八ヶ岳も見える!」
「あっちには北岳も見えるよ!」
嬉々としながら景色を楽しむ彼女たち。わずか2時間ほどで出合えてしまうけれど、高山に引けをとらない、ぜいたくな絶景にはだれもが感動するだろう。
山頂標識とともに、甲斐駒ヶ岳をバックに記念撮影。みんないい笑顔だ。
初めて登る栗沢山のパートナーに選んだ、「TX4 EVO」。ふたりともアプローチシューズを履いたのは今回が初めて。その感想を聞いてみた。
Pedi「いつも低山ではトレランシューズよりの柔らかめな靴を履いているので、ソールの硬いローカットシューズは初めて。いつも履いている靴はビブラムソールではないので滑ることもあるけれど、岩稜低山ならそれを選ぶかな」
せみ「私は岩稜の山だったら日帰りでもエクイリビウムGTXを履くかな。だから普段からローカット派ではないんだけど、ソールの堅いローカットというのは初めてで、すごく新鮮! でも日帰りだったらこれで行けると思えた。テント泊の縦走だと、やっぱり足を捻るのが怖いからハイカットがいいけど」
せみ「この靴はグリップ性が本当に安心! 登りはグリップが効いていい感じだし、岩に乗っても滑らないから安心して体重を預けられる」
Pedi「ふだん履く靴よりもソールが堅いと感じたけれど、そのぶん安定感があっていいよね」
アプローチシューズであるため、爪先部分には幅を広くとったクライミングゾーンも搭載されている。これにより岩に立ち込む際も滑らずグリップし、小さな凹凸にも足を乗せられるのはアプローチシューズの強み。岩稜なら絶対的に安心感は勝る。
Pedi「紐を締め上げると足首全体がきゅっと締まってフィットするのもよかったな。すごく安心感がある」
最適なフィット調整ができるようにクライミングシューズ由来のレーシングシステムを搭載している。シューレースを締め上げることで足首部分に通っている紐が連動し、足首までしっかりフィット。一般的なローカットのトレッキングシューズにはないフィット感が得られるのも、このシューズの魅力だ。
Pedi「アッパーがレザーでできているから少しずつ足に馴染んでいきそう。靴を自分好みに育てていけるのもいいよね」
アッパーのレザーはもちろん、ソールの硬さも履いていくことで足に馴染み柔らかくなる。また「TX4 EVO」はソールの張り替えが可能なので、長く履くことができる。
Pedi「色もかわいいよね。内側の差し色が効いてる! どちらも女性の好みにぴったりくると思う」
せみ「ウエアにも合わせやすいし。年代問わず選びやすい色じゃないかな」
今シーズンのカラーバリエーションは「カーボン/スプリングタイム(左)」と「ミネラル/サバナ(右)」の2色展開。ふたりも話すように女性好みのカラーも好ポイントだ。
Pedi「この靴があれば、行ける山域の幅も広がる気がする!」
せみ「山に応じて靴を決められるのがいいよね。ハイスペックすぎなくてちょうどいい!」
Pedi「今度は西穂高岳に履いていってみたいな~。日帰りで行けるし」
せみ「私は五竜岳! 小屋泊なら、この靴でもアリかな」
靴によって行ける山域もぐっと広がり、快適さもさらにアップ。登山の楽しみ方も世界も、どんどん広がっていく。
さあ、次はどんな山へ行こう。私たちが望む先には、まだ見ぬ美しい山々が広がっている。
歩行時間:約4時間
総距離:約4.7㎞
車の場合は戸台パーク駐車場に駐車し南アルプス林道バスで北沢峠へ。
公共交通機関の場合はJR飯田線伊那市駅からバスで高遠へ。高遠から市営の長谷循環バス、またはタクシーで仙流荘へ。仙流荘から南アルプス林道バスに乗車、北沢峠へ。
南アルプス林道バスは季節によって運行時間が異なるため要確認を。
原稿:阿部 静
撮影:加戸 昭太郎
WRITER
編集者、ライター、エッセイスト。登山やアウトドア媒体を中心に編集・執筆活動を行なう。プライベートでは登山や沢登り、渓流釣り、バックカントリースキー、アイスクライミング、魚突き、シーカヤック、アドベンチャーレースなど、あらゆる外遊びを楽しんでいる。ライフワークは狩猟採集にまつわる取材活動と自身の暮らしや旅のなかでの実践。登山雑誌『PEAKS』にて「狩猟採集食道楽あべちゃん」を連載中。著書に『雪の家』(クリーク・アンド・リバー社)がある
HIKER
登山歴は6年。きっかけは友だちと里山に登ったときに景色がキレイで感動したことから。いまでは地元・長野の山はもちろん日本各地の山へ、春夏秋冬問わず登りに行く。登山に行った際はその土地のごはんや温泉、ローカルスーパーに行くのも楽しみのひとつ
HIKER
地元の友人と「自然に触れたい」と御在所岳へ登ったのをきっかけに2019年から登山を開始。最近の山行は日帰り北アルプスが多いが、ヒマラヤでのロングトレッキングの経験もある。好きな山は間ノ岳。今後の目標は厳冬期のテント泊登山やバックカントリーに挑戦すること
※MEN’Sモデルあり