人気モデルがアップデート!長距離用オールラウンドシューズ〈AKASHA Ⅱ 〉
RECOMMEND ITEM : AKASHA Ⅱ
TRAIL RUNNING
- はじめに
- 前モデル〈AKASHA〉のアップデート版
- 耐久性とともにフィット感と通気性が向上したアッパー
- スポルティバのシリーズ中で最も厚底なミッドソール
- 定評のあるアウトソールは前モデルの仕様をそのまま流用
- LA SPORTIVAアンバサダーのインプレッション
- おわりに
はじめに
みなさま、いかがお過ごしでしょうか。2022年も残すところあと1ヶ月あまりとなりました。この1年のアウトドアライフはいかがでしたでしょうか。ここ磐梯朝日国立公園の福島エリアにも、お出かけになられる方々が増え始めています。7月に開設した安達太良自然センターにも多くのかたが立ち寄ってくれました。安達太良連峰の縦走をするための相談や、現在造成中のロングトレイル”磐梯・吾妻・安達太良ボルケーノトレイル”の情報を聞きつけて「実際に歩いてみたい」と訪れた人も。
ボルケーノトレイルに関しては、現在コンセプトブックを制作中です。コロナ禍でプレスリリースのタイミングを後ろ倒しにしておりましたが、ようやく来年の春、山開きの前あたりには情報を発信することができると思いますので、お楽しみに!自然センターでもスポルティバのシューズの取り扱いや相談なども行っておりますので、お気軽にお立ち寄りください(シューズの相談に関しては事前にご連絡を)。
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さて、今回のFOR OUR MOUNTAINでご紹介するのは、トレイルランニングシューズとしては4モデル目の登場となる〈AKASHA Ⅱ〉です。元祖〈AKASHA〉は、これまでのブログの中にも、比較対象としてたびたび登場してきましたが、メインとして紹介するのは、この〈AKASHA Ⅱ〉からとなります。以前、〈AKASHA〉について紹介しているパートはこちらよりご覧いただけますので、是非チェックしてみてください。
本編に入る前に、今回もスポルティバジャパンで取り扱っているCalze GM®(※以下 GMソックス)のご紹介を。GMソックスは、LASPORTIVAと同じイタリア北東部に位置するドロミテ山地で1960年に設立されたブランド。イタリアの職人達によって60年以上紡がれている伝統的な技術と知識を用い、さらに時代の変化と共に進化する最先端技術を融和させて最高品質を追求するアウトドア用のソックスの開発に取り組んでいます。「GMソックス」のブランドサイトはこちらより。
1962年にはイタリアで初めて、パイル技術を組み入れたクッション性に優れたソックスを製品化し、2000年には世界で初めて左右の足別々の専用パターンを用いたソックスを発表しました。日本ではまだ聞き慣れない「カルツェ ジーエム」というブランド名ですが、30年以上にわたってアルペンスキー・イタリア代表チームへソックスを提供したり、アルパインクライマーと共に全ての8000メートル峰の登頂も果たしています。現在では環境を守りながら製品を作り続けるため、素材・製造・流通における具体的な施策を積極的に取り組んでいるイタリアブランドでもあります。
ランニング用のシリーズもありますが、今回のブログで着用しているモデルはHIKEシリーズの1つ〈HIKE MERINO S-XTF[2432]〉です。RUNシリーズよりも丈が長く、薄手ながら足全体の保温性も高く、寒くなってきたこの時期にはランニング用としてもおすすめです。超極細のメリノウール(67%)を使用。約1年間使用していますが、ソックスの表面の毛羽立ちはあるものの、穴あきやヘタリもなく、現在も使用することができています。
前モデル〈AKASHA〉のアップデート版
すでにアップデート前のモデル=〈AKASHA〉をご愛用いただいていた方には説明するまでもありませんが、このシリーズは長距離のトレイルランニングにフォーカスし、様々なテクノロジーを搭載したウルトラトレイル用のシューズとも言えます。前モデルの〈AKASHA〉と、ぱっと目には大きく変わらないように見えますが、結論から言えば、定評のあったアウトソールそしてクッション性の高いミッドソール以外は全てが更新されました。
前モデルから更新された主なポイントを挙げるとすれば、「Ecology:エコマテリアル」、「Durability:耐久性」、「Protection:プロテクション」、「Breathability:通気性」になるでしょうか。では、ここからは前モデル〈AKASHA〉からのアップデートポイントも挙げながら、〈AKASHA Ⅱ〉の特徴について、詳しく解説していきましょう。なお、〈AKASHA Ⅱ〉そして女性モデルの〈AKASHA Ⅱ WOMAN〉のサイズ展開は上図の通りです。
新製品がリリースされてから、TJAR(トランスジャパンアルプスレース)やUTMB(ウルトラトレイル・デュ・モンブラン)、そしてアメリカで開催されたアドベンチャーレースの国際大会など、テレビ番組の併走撮影にて総距離にして約400kmほど岩稜や藪を含め過酷なフィールドを駆け回りました。アッパーの両サイドのメッシュ部にダメージが見られますが、実用的にはまだしばらく使用することができそうです。「Durability:耐久性」については、この半年使用してみて、実感できるアップデートになっています。
耐久性とともにフィット感と通気性が向上したアッパー
まずは、シューレース周りに関して。〈AKASHA Ⅱ〉のシューレースは、「100%リサイクル素材」に変更されました。それによる品質の妥協は一切なく、伸縮性や強度などは従来通りのクオリティを保っています。あまり印象はないかもしれませんが、LA SPORTIVAは使用するマテリアルや工場の製造ラインにおいての環境対応をいち早く取り組みんできた企業でもあり、そのアウトプットがこのようなカタチで具体化されはじめています。環境への取り組みに関しては、スポルティバジャパンが発行している「LA SPORTIVA MAGAZINE Vol.2」にも掲載しておりますので、こちら(PDF版)も是非ご覧ください。
シューレースを通すシューレースホール部も大きく変更されています。前モデル〈AKASHA〉では、最下段と最後の穴以外はアッパーの素材に直接穴が開けられた設計になっていましたが、〈AKASHA Ⅱ〉のシューレースホールは、それがベルト状のウェビングに変更されました。以前のブログで紹介している〈JACKAL〉〈KARACAL〉と共通の設計になり、前モデルと比べてシューレースの滑りがよくなったので、脱ぎ履きや締め付けの際の微調整がしやすくなりました。また、このウェイビング(靴紐を通しているループ)にも、リサイクル素材が使用されています。
そのウェイビングと連動して足の甲を包み込むサイドパネル部分のデザインも大きく変わりました。結論としては、前モデルに比べて、「しなやか」になりシューレースの締め付けと連動して「やさしく」足を包み込んでくれるようになりました。アッパーのベースとなるメッシュの上に、多くの穴が空いた伸縮性のあるTPU(熱可塑性ポリウレタン)素材の外皮が圧着された構成になっています。
TPUの外皮部も薄くなりかつ伸縮率が大きくなっている上に、その形状がシューレースの締め付けとダイレクトに連動して、中足部から踵方向にかけてのホールド感が得られる形状になっています。また、このサイドパネルによって半分隠れていているミッドソールに埋め込まれた樹脂プレート「STB CONTROL SYSTEM」とも繋がっていて、凸凹した不整地での着地の際に生じる横ブレを制御する役割も担っています。
足のホールド感に関しては、甲に当たっているタン部分の両サイドがソール部分と伸縮性のある素材で繋がっていて、スリップオン形状になっていることもポイントです。この構造自体は、前モデルの〈AKASHA〉や〈JACKAL〉〈KARACAL〉などの最近のシューズと共通しているものの、それらのモデルよりも伸縮性の高い生地が採用されているので、足を入れた瞬間のソックスを履くような感覚が他のモデルよりも物理的に高まっています。
さらにTPU素材の外皮は踵の方まで回り込んでいて、ヒールカップの形状を保ち剛性を高めるためのレイヤーにもなっています。この構成自体は、前モデル〈AKASHA〉とも共通するデザインなのですが、〈AKASHA Ⅱ〉では細かい部分で踵部に2点変更を加えています。
1点目は、そのTPU素材を踵からアキレス腱に当たる部分には貼らず(上図2枚目参照)、その部分に柔軟性を持たせていること。長距離=長時間のトレイルランニングは、足の各所にストレスがかかり、それがその内に足のトラブルを招きます。アキレス腱もそのトラブルを引き起こす要因になる部位であるため、無駄な圧迫を少しでも減らすべく、設計の変更が加えられました。
2点目は、踵内側のクッションの厚みが変更されています。前モデル〈AKASHA〉では、内側のクッションを厚くすることによって、アキレス腱の当たりを緩和する設計になっていましたが、中に入っているクッション素材が長期の使用の中で脱落してしまうなど、耐久性の面で少し改善の余地がありました。今回のアップデートによってその耐久性も高まり、さらに快適性も向上しています。
アッパーに関してのアップデートは、爪先部分にも見られます。まずは、爪先部分のメッシュ素材に関して。前モデル〈AKASHA〉よりも表層のメッシュ穴が細かくなり、トレイル上の枝や岩の凹凸など障害物に引っかかる確率が低くなりました。また、以前のメッシュの場合には、川の中を歩く渡渉の際など、小さな石や砂がメッシュ穴に詰まってきましたが、〈AKASHA Ⅱ〉に採用されているメッシュはその点もクリアされています。
最後に爪先のプロテクションに関して。爪先の先端部は、前モデル同様にTPU素材のバンパーが配置されていて、石や岩などの硬いものに対する指先の衝突から保護してくれています。トレイルランニングを長く続けていると何度となく爪先をぶつける経験をされているかと思いますが、この部分に十分なプロテクションが無いシューズで爪をぶつけた時の痛さはいつまでも記憶に残っていますよね。場合によっては爪の下で内出血することもあり、ロングレースとなるとその後の走りにも影響することがあるので、爪先のバンパーの有無は意外と重要なポイントです。
耐久性という意味では、爪先部のメッシュに熱圧着された、薄いラバーピースも効果があります。トレイルランニングでは、色々な場面でトレイルの障害物と「擦れる」場面が多く、それが繰り返されて表面生地が摩耗していきます。冒頭に記載したように、かなり過酷な環境で400km以上使用してもそのラバーピースのエッジは少し摩耗してきているものの、剥がれたり欠けたりはしておらず、プロテクション効果も下がっていません。
そのラバーピースですが、実は前モデルの〈AKASHA〉として販売されている間に、途中でマイナーチェンジがかかっています。初期の〈AKASHA〉では、ミッドソールとアッパーのメッシュ素材が直接繋がっていてラバーピースもその境界まで貼ってありました。それが後期の〈AKASHA〉では、ミッドソールとの間の外周に生地を一枚追加し、ソールに近く摩耗度が高いエリアのプロテクションを高めました。その後期〈AKASHA〉の構成が、〈AKASHA Ⅱ〉にも踏襲され、かつ摩耗頻度が高い側面に近い部分のラバーピースの密度を高めることにより、耐久性をアップさせています。
スポルティバのシリーズ中で最も厚底なミッドソール
続いて、ソールについて見ていきましょう。前モデル〈AKASHA〉を履いていた方が見ると、外観的には何も変更がないように見えますが、ミッドソールに関して2点、アップデートポイントがあります。1点目は、ミッドソールの素材に、リサイクルマテリアルが採用されたことです。シューズを構成するパーツのうち、最も体積が大きい部品がミッドソールであるため、将来に向けた長いロードマップの中での環境負荷を考えると、大きな変更点となるでしょう。
2点目は、ミッドソールとインソールの間に配置されているクッションが変更されました。インソールを外すと直接見える3mm厚の赤い発砲ウレタンシートです。前モデル〈AKASHA〉にも同じように衝撃吸収のためのシートは入っていましたが、今回のアップデートにより、より衝撃を吸収する素材に変更されました。インソールを外して指で押してみると分かりますが、やさしく衝撃を受けとめてくれます。
ソール周りに関しての変更点は以上となりますが、基本スペックを含め、改めて〈AKASHA Ⅱ〉のミッドソール・アウトソールについて見ていきましょう。まずは「ドロップ」に関して。「ドロップ」とは、爪先部と踵部のソール厚の差のことをいいます(「オフセット」と呼ばれることもあります)。私たちの素足がドロップ=0mmで、爪先側よりも踵側の方が高ければ高いほど身体の前方向に傾斜がつき、ドロップの数値も大きくなります。
一般的に販売されているランニングシューズの中にも、素足の感覚を再現するためにドロップ0mmのシューズもありますが、スポルティバのランナップの中には0mmのシューズはありません。ドロップの数値が大きいと、身体は前に傾斜して前に倒れようとするので、自然と体重移動のサイクルが生まれ楽に走ることができます。しかしドロップが大きくなればなるほど、前に倒れ込もうとする力も大きくなるため、蹴り出しから着地までの時間が物理的に短くなり、ストライドも小さくなってしまいます。そのため、一般的にはスピードを出したいときにはドロップの値が小さなシューズが選ばれることが多くなります。現在、日本で取り扱っているトレイルランニングシューズの中でドロップの数値が最も小さいのは〈HELIOS Ⅲ〉。「家からトレイルまで」をコンセプトに、舗装路からトレイルまで比較的短い距離を走るために設定されたシューズです。
しかし、単純にドロップの設定数値が上述のような観点(ドロップの数値が小さい=ストライドが大きい:スピードが出る)で決まっている訳ではないことを知っておく必要があります。そこで出てくるキーワードが「ロッカー形状」です。「ロッカー形状」とは、ソールの爪先が反り上がっている形状のことです。〈AKASHA Ⅱ〉や以前のブログで紹介した〈JACKAL〉など、レースでの使用も想定したシューズは、体重移動を助け自然に前へ進むようにロッカー形状が強めに設計されています。
ソールの転がりが良いロッカー形状のソールは、ある意味でドロップの値が大きなシューズと同じ原理が働くため、ロッカー形状も強く更にドロップの値も大きくしてしまうと、走行時に前傾しすぎてしまいます。そのためロッカー形状の強さとのバランスを取ってドロップの数値を抑えているシューズもあります。〈AKASHA Ⅱ〉はドロップ6mm。これもランニングシューズとしては比較的小さな値になりますが、ストライドを広げるためというよりは、ロッカー形状とのバランスを取った設計によるものです。
長距離レース用のシューズとして、〈AKASHA Ⅱ〉と〈JACKAL〉を比較検討する方もいらっしゃると思いますので、この2つのシューズのスペックと仕様を今一度見ておきましょう。〈AKASHA Ⅱ〉:踵31mm/爪先25mm=ドロップ6mm 、〈JACKAL〉:踵26mm/爪先19mm=ドロップ7mmと、ドロップの数値は1mm差ではありますが、ミッドソールの厚みが全体的に5〜6mm異なります。〈AKASHA Ⅱ〉はミッドソールの物理的な厚みを生かした クッションなのに対して、〈JACKAL〉はミッドソールに衝撃吸収のための特殊なポリウレタンパッドを埋め込むことによって、ミッドソール厚を抑えながらも高い衝撃吸収を実現しています(上図2枚目)。
〈AKASHA Ⅱ〉はミッドソールが厚い(スポルティバのトレイルランニングシューズの中で最も厚底)ため、衝撃を吸収すると同時に地面からの反発もあります。そのエネルギーを推進力としてうまく利用すれば、少ない力で前に進むことができますが、クッション性が大きくなる分、左右へのブレにもつながります。そこで〈AKASHA Ⅱ〉の両側面には、前章でも少し触れた「STB CONTROL SYSTEM」と呼ばれる樹脂製プレートがシューズの両サイドに埋め込まれていて、左右への倒れ込みを抑制しながら、ヒールカップをしっかりと自立させ、フィット感と安定感の双方を向上させる設計になっています。
定評のあるアウトソールは前モデルの仕様をそのまま流用
では、続いて靴底=アウトソールも見ていきましょう。アウトソールに関しては前モデル〈AKASHA〉からの変更点はありません。スポルティバの登山靴のアウトソールと言えば「Vibram(ヴィブラム)ソール」という印象がある方も多いと思いますが、トレイルランニングシューズに関しては、黎明期からスポルティバ独自に開発した「FRIXIONシステム」と呼ばれるコンパウンドを採用しています。
「FRIXIONシステム」には、シューズの用途によってグリップ性と耐摩耗性が異なる5種類のパターンがあります。現在、トレイルランニングシューズに使用されているのは、その中の「FRIXION® BLUE / FRIXION® RED / FRIXION® WHITE」の3種類です。〈AKASHA Ⅱ〉に採用されているのは、グリップ性と耐摩耗性をバランスが良く組み合わせた「FRIXION® RED」。
「FRIXION® RED」の特徴は、硬さ=粘りが違う2種類のコンパウンドを組み合わせて1つのアウトソールを構成していることです。爪先の内側と踵の外側の黄色い部分には、耐摩耗性に優れたコンパウンドを使用し、傾斜地での登りや着地の際に地面を確実に捉えるためのスパイクの役割を担っています。それ以外の黒色のアウトソールは、より粘性の高い柔らかめのコンパウンドを使用し、岩、砂利、泥、土・・などトレイル上の様々なサーフェイスにおいてグリップ力を発揮します。※〈AKASHA Ⅱ〉のラグの高さ=4.5mm
スポルティバのトレイルランニングシューズのグリップ性能を語る上では、上述の「FRIXIONシステム」に加え、「IMPACT BRAKE SYSTEM(インパクトブレーキシステム)」にも触れない訳にはいきません。「IMPACT BRAKE SYSTEM」はトレイルランニングシューズに限らず、登山靴やアプローチシューズにも採用されている独自のラグ(ソールの凸凹)パターンの考え方につけられた総称です。基本的な概念としては上図のように互い違いに配置されたラグの凹凸を利用して登りでの駆動力、下りでのブレーキ、そして着地時の衝撃吸収を物理的に効かせる仕組みで、そのラグの形状や配置はそれぞれのシューズの性格に合わせてデザインされています。
「スポルティバの靴はソールのグリップが良い!」と耳にすることがありますが、この「IMPACT BRAKE SYSTEM」がそれを下支えしていると言っても過言ではありません。シューズの種類や用途によって形状や配列は様々で、ブレーキの強さや衝撃吸収の度合いもそれぞれ異なります。そういったことも頭に入れてソールを見ながら路面との関係性について想像を膨らませていただくと、“山道具としての靴選び”が一層楽しくなってくると思います。〈AKASHA Ⅱ〉のラグパターンは、前足部と後足部でラグの矢尻形状の向きが真逆に設定されていて、前足部は登りでのトラクションを、後足部は下りでのブレーキが効くようにカギ爪がセットされています。
〈AKASHA Ⅱ〉のミッドソールのクッション構造やアウトソールのパターンが〈JACKAL〉と違う(※〈JACKAL〉に関する詳細はこちらより以前のブログをご参照ください)ことを記載してきましたが、最後に1点「アウトソールの底面積」についても触れておきたいと思います。図に示したようにアウトソールの幅方向が、前足部=5mm、土踏まず=10mm、踵にかけての最も広い部分=15mmも〈AKASHA Ⅱ〉の幅が広く設計されています。特に踵部のミッドソールが厚底な分、底面積も増やして安定感を出す設計になっています。
これだけ靴底の面積が違えば、この2モデルを横に並べると見た目にも違いますが、トレイルを走った感覚も異なります。特に下りでの着地の安定感、そして岩場や凹凸の多いトレイルでの前足部外(小指)側のグリップに違いを感じます。〈AKASHA Ⅱ〉のソール自体の設置面積が大きいことに加え、粘性の高いアウトソール(黒色のコンパウンド)が地面に触れる面積が〈JACKAL〉とは大きく異なるため、着地で踏み込んだ時に感じる地面を捉える感覚に差が生まれます。
図に示した小指側の6つのラグの周辺のみ土台部分が削ぎ落とされた設計になっていることに注目してください。〈AKASHA Ⅱ〉のラグの高さの公称値は4.5mmになっていますが、このエリアのラグは未使用時の実測値で7mm〜9mmあり、実際の足幅よりも外側にあるため、登りでも下りでも小指側のエッジに力がかかると、斜面や凸凹に合わせてこれらのラグが柔軟に動いて対象となる地面に食いつく感触があります。その瞬間、シューズも捻れますが、アッパーやシューレースの伸縮性と連動し、シューズの中の足にはストレスを与えることなく進んでいくことができます。
LA SPORTIVAアンバサダーのインプレッション
ここまで、前モデル〈AKASHA〉から〈AKASHA Ⅱ〉へのアップデートポイントや基本仕様、そして同じ長距離向けの〈JACKAL〉との違いなどを記載してきましたが、本章では〈AKASHA Ⅱ〉を実際に使用しているLA SPORTIVAアンバサダーの使用感をインタビューしているので、そのコメントもご紹介していきたいと思います。
望月 将悟 / Shogo Mochizuki
私は2016年に前モデルの〈AKASHA〉と出会い、それを使用して日本アルプスを舞台とした総延長415kmの山岳レースで新記録を出しました。また、2018年に開催された同大会でも〈AKASHA〉を履き、15kgの荷物を背負って無補給チャレンジし完走しています(※上写真:2018年に実際に使用した前モデル〈AKASHA〉)。
その後は、スピードの出しやすさから〈JACKAL〉や〈KARACAL〉を使用していましたが、2022年に日本アルプスの山岳レースに参加する際には、この〈AKASHA Ⅱ〉を415kmの長い旅の相棒として選びました。〈AKASHA Ⅱ〉の良いところは、前モデルの〈AKASHA〉と同じく、足全体を包み込んでくれる感覚があることです。履いているうちに靴というよりかは足の一部のようになってきて、物理的な重さを感じなくなってきます。日本アルプスに多い岩場が続くような場所では、足を置いた場所で止まり、地面をしっかり捉えてくれるところに信頼感があります。尖った石の角を踏んでも足裏にダメージを及ぼすような突き上げは全くありません。前モデルの〈AKASHA〉との着用感の違いを挙げると、「足の包み込みがさらに優しくなり、足との一体感が増したこと」でしょうか。更なるアップデートポイントを求めるとすれば、耐久性や履き心地はそのままに軽量化を目指すことと、濡れた後の速乾性でしょうか。
大畑 匡孝 / Masataka Ohata
私はトレイルランニングを中心に競技活動を行っており、日本アルプスを舞台とした総延長415kmの山岳レースの2020年(荒天により中止)、2022年大会に出場しています。2022年大会では〈AKASHA Ⅱ〉を履いて415kmを走破しました。〈AKASHA Ⅱ〉は高いクッション性と安定性がある厚底ソールにしては反発力もあり、走った時に前に進む印象のトレイルランニングシューズです。日本アルプスと舗装路を含め415kmを一足で走り切ってシューズが壊れることもなく、アウトソールの摩耗も半分程度なので、耐久性も良いと言えるでしょう。岩場のセクションでは、岩の隙間に足を突っ込んでホールドしながら進むシーンもありましたが、それによる大きなダメージもありませんでした。(※上写真:2022年に実際に使用した〈AKASHA Ⅱ〉)
トレイルランニングシューズとしては、比較的足幅が広い設計となっているので、レース後半の浮腫んだ足も優しく包み込んでくれます。前モデルの〈AKASHA〉のボリューミーな踵のクッションと形状を改良したことで、耐久性とホールド感が向上しました。サイドパネルのプロテクションパーツのデザインが変更されたことで伸縮率も上がり、フィット感も良くなりました。サイドパネルやタンのメッシュ部分が増えたことで汗抜けや雨に濡れた時の渇きが良くなっています。
おわりに
長距離用のトレイルランニングシューズとして設計されている〈AKASHA Ⅱ〉ですが、前モデルの〈AKASHA〉から様々なアップデートが加えられたことによって、完成度の高いオールラウンドシューズが誕生しました。「長距離用」と聞くと、エキスパート用のように思えてしまうかもしれませんが、この〈AKASHA Ⅱ〉は、これからトレイルランニングを初める方が履く1足目のシューズとしても、おすすめです。その最大の理由は、クッション性やフィット感などとにかく履いていて心地良いこと。不整地を走っていても足にかかるストレスが少なく、まだ山を走ることに慣れていなくても楽しくその時間を過ごしていただけるかと思います。
また、〈AKASHA Ⅱ〉は、スポルティバのトレイルランニングシューズの中でも、特に足幅に余裕があるモデルですので、普段のシューズ選びの際に”幅が広い”シューズを求めている方にも納得いただけると思います。トレイルランニングシューズとは言うものの、100kmを超えるような長距離のウルトラトレイルでは、走るよりも歩く時間の方が長くなる区間もあるほど。そう言った意味では、ランニングだけではなく、ウォーキングのためのシューズでもあり、ロングトレイルハイキングや登山など「歩く」ことがメインの用途にも相性が良いシューズです。
そう言った意味で、これから長距離のトレイルランニングに挑もうと思っている方、これからトレイルランニングをはじめたいと思っている方、これから荷物を軽量化してファストパッキングやロングトレイル に挑戦しようといている方、これまでの登山靴をトレイルランニングシューズに履き替えて軽快な登山をはじめたいと思っている方・・など、新たな挑戦を心地よく後押ししてくれるオールラウンドシューズとして、まずは足入れしてそのフィット感を試していただきたいモデルです。
[ 次回予告 ]
次回のFOR OUR MOUNTAIN vol.14では、同じくトレイルランニングシューズのカテゴリーから〈CYKLON CROSS GTX®〉をご紹介いたします。画像でもお分かりのとおり、足首まで 覆われるゲイター付きでかつGORE-TEX®仕様。欧州では、スノーリゾートなどをフィールドにした雪上ランニングレースも盛んに行われており、そのような競技やトレーニング用に設計されたシューズです。「BOA®フィットシステム」も採用され、見た目にも気になるゲイター一体型のマウンテンランニングシューズです。