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FOR OUR MOUNTAIN - スポルティバジャパン公式ブログ

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現代のクライミングにマッチさせて誕生した〈SOLUTION COMPソリューションコンプ

RECOMMEND ITEM : SOLUTION COMP

はじめに

みなさま、いかがお過ごしでしょうか。秋の紅葉も終盤に差し掛かり、新型コロナウイルス(COVID-19)に翻弄された2020年も残すところ1ヶ月となりました。みなさまにおかれましても、これまでに経験のない1年となったとこと思います。まだまだ収束の兆しが感じられない毎日ではありますが、下を向いて閉じ籠ってばかりはいられませんので、この生活様式の変化を前向きに捉え、今できることを日々考えて行きたいと思います。

前々回のブログ(TRANGO TOWER GTX®)冒頭に少し触れた里山トレイルの再生整備も日々作業を進め、灌木や笹そして倒木で藪と化していたトレイルもマウンテンバイクやトレイルランニングで周回できるまで繋がってきました。自然を守るためにも継続したメンテナンスが大切で、そのためには持続可能なトレイル整備の仕組みづくりが必要になります。

先日、この里山トレイルの利活用と維持管理を想定したモニターイベントの一つとして、マウンテンスポーツを使った企業のチームビルディング研修を企画・誘致し試行してみました。トレイル整備にはじまり、ファットバイク、オリエンテーリング、トレイルランニング、外ごはん作りと盛り沢山。そこから10分しないうちに足湯や温泉にアプローチすることができるのも、里山ならでは。

今後はトレイルランニングやマウンテンバイクなどのイベントなども開催することで、その収益をトレイルの維持管理費に当て、アクティビティの前に参加者自らの手でトレイル整備にも携わって頂くことで、自然の弱さや強さを体験いただく機会になれば良いかなと考えています。具体的なプランが決まりましたら、次回以降のブログでもお知らせいたします。(お問い合わせは、丘と山製作所のFACEBOOKのメッセージを送信ください)

より強くコンペシーンを意識しディティールを追求した〈SOLUTION〉の進化版

今回、FOR OUR MOUNTAIN初の「CLIMBING」カテゴリーのご紹介ですが、クライミングシューズも読み解いていくと、かなり奥深く他のカテゴリーと比べてより繊細でメカニカルな印象を受けました。そして、写真とテキストベースではなかなか表現しきれないことも多いので、動画を活用するなど伝達方法の工夫も必要そうです・・さて本題に入りましょう。

オリンピックの舞台で初めてクライミング競技が行われるはずだった2020年。それに合わせて、LA SPORTIVAが現代のクライミング競技の傾向に合わせ、「かき込み、スメアリング、フック」を重視して市場に投入したシューズが、今回ご紹介する〈SOLUTION COMP(ソリューションコンプ)〉です。

最先端のクライミングは常に変化しています。課題やムーブにはトレンドがあり、トップクライマーは、いつも新たな課題に対応しなければなりません。クライマーのパフォーマンスを左右するクライミングシューズも、進化するクライマーの力と技術に寄り添い続けることが求められます。〈SOLUTION COMP〉の前モデル〈SOLUTION〉は、2007年のデビュー後、クライマーの厳しい要求に応え続けてマイナーチェンジを繰り返しながら成熟したモデルで、今でも世界中で多くのファンが使い続けているモデルです。

その〈SOLUTION〉と言えば、何と言っても東京2020のスポーツクライミング競技に内定し、メダル候補として活躍が期待される野口啓代選手が長きに渡って愛用してくれていたのが印象的です。野口選手をはじめ、失敗の許されない場面で力を最大限に発揮させてくれる一足として、世界のトップクライマーも長らく愛用してきたLA SPORTIVAの歴史に残る名作と言って過言ではないでしょう。

その〈SOLUTION〉に“COMP”の文字が加わった新製品が、〈SOLUTION COMP〉。これまでの十数年、モデル名を変えずにマイナーチェンジを繰り返してきた製品が、新モデルとしてリリースするからには、シリーズを通して継承しているポイントの他に変更点も色々とあるものと思われます。そこで今回は、日本を代表するクライマーでありチーム・スポルティバの樋口純裕さんに、最近使用している他のモデルとの違いを含め、〈SOLUTION COMP〉を実際に数ヶ月使用してみた感想を伺いました。


【プロフィール】

樋口 純裕(ひぐち・まさひろ)

1992年9月7日生まれ/佐賀県出身/身長167cm
スポーツクライミングアスリート、クライミングジムインストラクター。

幼少のころから父親のザックから顔を出して岩場に通う。水泳や柔道もやっていたが中学生からは本格的に競技の世界に身を投じる。初出場のJOCで2位、2012年リードジャパンカップで大人も含めた大会で初優勝。また2009年から日本代表として国際大会にも多数参戦。2018年にはリードワールドカップで3位となり初の表彰台を飾る。

また外岩でも「乾杯 14C」「空知 14D」のRP、「ラッキーボーイ13D」のOSなど競技外の活動も精力的に行なっている。現在は自身のクライミングも行う傍らPUMP2にてユースクライマーの指導も行うなどコーチとしても活動している。

Q:〈SOLUTION COMP〉を手にした時の印象は?

正直な話、初見では全く興味をそそられませんでした。というのもインドアクライミング向けという意味では、すでに〈THEORY(上写真)〉を使用していましたし、それに加えて“ソリューション”というモデルに対するイメージが初代〈SOLUTION(ソリューション)〉のまま止まっていたのです。

初代〈SOLUTION〉が自分の足やクライミングスタイルに合わなかったということではありません。むしろ〈SOLUTION〉は、かなり完成度の高いシューズだと思っています。発売当時から履きはじめ、その後〈FUTURA(フューチュラ)〉に乗り換えるまで、長く愛用していました。

では、自分にとって何が不安要素であったかと言えば、「過度な剛性の高さ」と「ヒールのかかり方」の2点が挙げられます。

現在は、ルートクライミングでは〈FUTURA(写真1枚目)〉、ボルダーでは〈SKWAMA(写真2枚目)〉を使っていますが、クライミングジムで使うことを想定すると、〈SKWAMA〉の剛性を超えるシューズでは、「面乗り」に対応できないと感じていました。言い換えれば「ソールが硬過ぎるシューズではフラット面に乗った時に滑ってしまう」ということです。

また、ヒールの形状は慣れ親しんだ〈FUTURA(写真1枚目右)〉と同タイプだったので、そこに違和感はありませんでしたが、そのヒールカップの形状はこれまで比較的柔らかいシューズに採用されている仕様だったので、剛性の高いボディとの組み合わせはバランスが悪いのではないかという勝手な先入観もありました。

Q:〈SOLUTION COMP〉を実際に履いて登ってみた印象は?

結論から言えば、自分の頭の中でイメージしていたことは、どれも無用な心配ばかりでした。〈SOLUTION COMP〉を実際に履いて感じた大きな特徴はこの2つです。

  • 足首から下を包み込んでくれている安心感
  • 初代顔負けの“何でも屋さん”

では、その2点をもう少し掘り下げて解説していきます。

まずは「足首から下を包み込んでくれている安心感」について。シューズのフィット感は〈FUTURA(写真1枚目)〉や〈THEORY(写真2枚目上)〉は、締め上げてくる感じなのに対して、〈SOLUTION COMP〉は足を包み込んでくれている感じがします。〈SOLUTION COMP〉は、シューズ全体の剛性が高く形状がハッキリしているので、足入れした時の変形が少なく足がしっかりと収まっている感じがします。

さらに、他のクライミングシューズと比べてハイカットになっているので、グラつきやすい踵と足首周りを程よくサポートし安定感があります。インドアクライミングで昨今流行りのハリボテのスメアリングやコーディネーションの素早い動きなど、足が強く面にコンタクトする場面で効果を発揮します。面を踏んで立ちこんでいくときや着地した瞬間の力のコントロールが、他のモデルに比べて優れている印象があります。実際のところ、そのようなクライミングが苦手なのですが〈SOLUTION COMP〉を履いてからは、そうした課題に挑戦していく意欲が湧き、少ないトライ回数で課題を登れるようになった気がします。

Q:「初代顔負けの“何でも屋さん”」とは?

シューズ自体は硬めで〈SKWAMA〉のような“しなる”感じはあまりありません。足入れをしてまず感じるのは土踏まずから先が細いということ。新品を下ろしたての頃は、足先を押し込んで履く感じで「やっぱり硬いなぁ」と思いましたが、2、3日経つと馴染みはじめ、足先の細さも徐々に気にならなくなります。1週間ほどで〈SKWAMA〉と同じくらい柔らかくなり、足の動きを追ってくれるようになりました。

ただし、それ以上は柔らかくはならず、使用しはじめて1ヵ月以上経っても一定の剛性を保ち続けています。フニャフニャにはならないので、ちゃんと足置きができていれば細いエッジに強い力をかけて立ちこんでも抜けるようなことがありません。

これはスポルティバのクライミングシューズの幾つかに搭載されている「P3 SYSTEM(PERMANENT POWER PLATFORM)」がこの〈SOLUTION COMP〉にも採用されていることも関係します。「P3 SYSTEM」は、ハードに長期間使用した後でも最初の性能を落とすことなく、クライミングシューズのアーチのシェイプがへたらないLA SPORTIVAが特許取得済みの独自構造が採用されているのです。

P3 SYSTEM:ハードに長時間使用した後でも最初の性能を落とすことなく、クライミングシューズのアーチのシェイプがへたらない構造のシステム
通常よりもダウントウの形状を長くキープできるシステム。常に最高のパフォーマンスを楽しめる。

「P3 SYSTEM」の印がついたシューズは「使っているうちにヘタってきてフラットシューズになってしまう」といったダウントゥのクライミングシューズに見られた弱点を克服し、より長くパフォーマンスを維持してくれるようになりました。この「P3 SYSTEM」は、土踏まず周辺のアーチを強力にサポートする構造になっているので必然的に爪先に力が集中し、あと少しで足が抜けそうなギリギリの場面でも「シューズが足を残してくれた」ということもあります。

ソールは従来型と同じビブラムXS-GRIP2(3.5㎜)を使用していますが、アッパーとランドのラバーの厚さ、ミッドソールの形状を変更してよりソフトになりました。高いフリクション性能を持ち適度に柔らかさもあるので、面にベタ置きしても安心感があります。

安心感があるのは足裏だけではなくヒールにも言えることです。前モデルまでの〈SOLUTION〉シリーズで採用されていた一体型の硬いヒールカップではなく、〈FUTURA〉や〈PYTHON(パイソン)〉などアスリートからも一定の評価を得ているシンプルなヒールカップ形状が採用されています。ほどよく変形してくれるので、ホールドに食い込むようにフィットし、従来型では苦手だった横掛けやボリュームのあまりないホールドにもヒールが安心してかけられるようになりました。

また、アッパーは指の付け根までトゥーラバーで覆われ、ホールドの大きさを問わずトゥフックが決まるようになりました。それにより、多少ポイントを外したとしてもホールドに掛かってくれたり、アウトサイド側で掛けるような場面でもトゥフックができます。ラバーはコーディネーション中に勢いよくフックを掛けても、しっかりグリップするフリクション性の良さが感じられます。(写真1枚目:左より〈SOLUTION COMP〉〈FUTURA〉〈SKWAMA〉)

モデル名に“COMP”とあるように、現代のインドアクライミングのコンペシーンに対応しデザインされたモデルであることは間違いありません。これまでに挙げたポイントを総合して考えると、外岩でもかなり戦力になるクライミングシューズなのではないかと思っています。初代〈SOLUTION〉も、ボルダー・ルート/インドア・アウトドア含め幅広く使える多用途シューズでしたが、今回〈SOLUTION COMP〉へのアップデートにより、その印象がより強くなったと言えます。

Q:〈SKWAMA〉と比べたときの違いは?

〈SKWAMA〉との最大の違いはシューズの剛性です。剛性が高いのはやはり〈SOLUTION COMP〉で、〈SKWAMA(上写真)〉の方がよりしなやかに動く印象があります。そういった意味で、足の動きをより細かく引き出してくれるのは〈SKWAMA〉。ただし、その分動きを繊細にコントロールする必要があります。

一方〈SOLUTION COMP〉は安定性の方にスペックを振っているため硬く、細かな動きは〈SKWAMA〉と比べると見劣りしますが、余計な挙動が出にくいので(ビギナー以上のレベルで)力量や技術に自信のない方や、関節の安定性が男性に比べると劣ってしまう女性には〈SKWAMA(写真2枚目)〉よりも断然おすすめできるシューズです。つま先でシビアなフットホールドを踏みこんでいくときもシューズが負けることなく踏んでいけるのは、この剛性の高さ故のことです。

あと、ボルダーだけでなく同じシューズでルートも登る場合は〈SOLUTION COMP〉の方が◎。ジムのルートでも最近ではヒールもトゥーも出番が結構多いのでそうしたムーブの時も安定してこなすことができれば、余計な力が入りにくく、持久力の維持にもつながります。また、小さなフットホールドを踏んだ時に痛くないのも結構大事なポイント。それらを総合して見ても、ここまで何度か出てきた〈SOLUTION COMP〉の「剛性の高さ」がボルダーに比べて必然的に長い時間登り続けるルートクライミングでのストレス軽減にもつながるのです。

Q:〈SOLUTION COMP〉のサイズ感は?

〈SOLUTION COMP〉を試し履きすると、足を入れた際に先端が細く感じるのでサイズ選びで迷ってしまうかもしれません。あまり伸びるシューズではないので、攻めすぎは良くないですが、このシューズに関しては幅よりも縦のサイズ感、つまり爪先の詰まり具合とアキレス腱の付着部周辺のフィット感を優先的に考えてもらうといいのではないかと思います。

既にスポルティバのクライミングシューズを履いている方は〈SKWAMA〉と同じサイズ、もしくは〈FUTURA〉のハーフサイズアップが程よいサイズ感ではないかと思いますので、サイズ選びの際の参考にしてみてください。ちなみに私の場合は実寸が25.5cmでクライミングシューズ以外は基本的に26.5cmを履いている足に対して、〈FUTURA〉は39、〈SKWAMA〉は39.5、〈SOLUTION COMP〉は39.5を選んでいます。ただし、自身の足型に対して〈SOLUTION COMP〉は、踵の周辺が少し余り気味なため薄い靴下を履いてジャストフィットさせています。

フィッティングに関しては「FAST LACING SYSTEM(ファストレーシングシステム)」により、シューズの爪先から足首までワンアクションで締め上げ、その時々に合わせた微妙なフィット感を調整することが可能です。ベルクロの扱いやすさとレース(靴紐)の締め付けのしっかり感を両立させた画期的なクロージャーシステムで、ストラップも薄くしなやか(※雑に扱うと切れてしまうので、その点は注意が必要)なので甲への違和感も感じません。

また〈SOLUTION〉に比べてソフトになった土踏まずからアキレス腱にかけて踵の周囲を囲むように配置されているスリングショット(黄色いラバー部分)により、つま先への押し出しと「FAST LACING SYSTEM」の相乗効果で足をしっかりホールドし、シューズ内での足のズレを防いでいます。これも、このシューズを履いた時のフィット感の良さに大きく関係するポイントでもあります。

おわりに

〈SOLUTION COMP〉は使い込んでいってもシューズがヨレにくく、ソールの寿命まで履ききることができる高性能と高耐久を両立しています。それでありながら斬新なアイデアを投入し、爪先から足首まで全体的に高い水準でバランスが取れたクライミングシューズに仕上げているという意味で、〈SOLUTION COMP〉はこれまで履いてきたクライミングシューズの中でも”THEスポルティバ”な1足だと感じています。

新商品が次々と登場するこの時代に、元祖〈SOLUTION〉のデビューから数えると登場して15年近くになるロングセラーモデルには、それを廃盤にしないブランド側の想い、そしてそれを使い続け支持するユーザーの想いが詰まっています。アスリートのフィードバックを基に進化を遂げたコンペモデルではありますが、このシューズはトップクライマーのためのモデルではないことを最後にもう一度お伝えしておきます。なかなか乗り越えられない壁へ勝負を挑むとき、足元からプッシュしてくれる心強いパートナーになってくれるはずです。

[ 次回予告 ]

次回は、MOUNTAINシューズカテゴリーより、今シーズンの新製品〈TRANGO TECH LEATHER GTX®(トランゴ テック レザー GTX®)〉をご紹介します。〈TRANGO TOWER GTX®〉の回にもソールのフレックスに関する比較で少し登場しましたが、より詳細に〈TRANGO TECH LEATHER GTX®〉を掘り下げていきます。このシューズを履いて登山をしている方を既に多く見かけますが、なぜこのシューズが選ばれるのかなど、登山家で山岳ガイドの花谷泰広さんにもお話を伺ってみたいと思います。

また、スポルティバジャパンが制作しているブランドマガジン「LA SPORTIVA MAGAZINE Vol.02」の編集も現在、最終段階に差し掛かっています。チーム・スポルティバの山岳アスリート、望月将悟さんが語ってくれたマウンテンスポーツと向き合う想いやLA SPORTIVAとの出会いなどもお聞きしました。マガジンの発刊日程など詳細が決まりましたら追ってお知らせいたします。お楽しみに!

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FOR OUR MOUNTAINWRITTER

写真:一瀬圭介

<LA SPORTIVA アンバサダー>
一瀬 圭介 Keisuke Ichinose

プロマウンテンアスリート・山岳カメラマン。アラスカなど極北地帯の雪上を数百キロ進む超長距離バイクパッキングレースを中心に、ファットバイクによる競技活動を行う。また、山岳カメラマンとして国内外のアウトドアフィールドにおける映像制作なども手がける。2020年より福島県二本松市岳温泉にて「丘と山製作所」を立ち上げ、磐梯・吾妻・安達太良山域にてアウトドアアクティビティに関する事業も展開する。カリマーインターナショナル / ラ・スポルティバ アンバサダー

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