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PRODIGIOプロディジオが本当の真価を発揮する場面はどこなのか?

OUTLINE

はじめに

今回、La Sportiva初のウルトラトレイル専用NEWモデルとして発売されたPRODIGIOを使ってみた感想を書かせてもらうことになった。まず、皆さんにお伝えしたいのは私はプロランナーではないということだ。私は、トレイルランニングのレースを撮影するランニングカメラマンをしている。

ランニングカメラマンというのは、レースで選手を追いかけながら撮影をする文字通り「走るカメラマン」だ。選手ほどの走力は求められないものの、山というフィールドの中で自由に動き回り撮影をする機動力が求められる。その機動力を生み出してくれるものの一つとして自分の足にあったシューズが必要になる。
今回PRDIGIOをその新たな相棒として導入することになった。

また、私はランニングカメラマン以外に撮影歩荷という仕事もしている。撮影歩荷はテレビ番組等の撮影に必要な機材を運ぶ仕事になるのだが、荷物は概ね20kg〜30kg、移動距離に関しては長い日は20km近い移動になることもある。私はそういった現場においてもPRODIGIOを使用することがある。

トレイルランニングとは対極にあたりそうな歩荷の仕事で使うことで、このシューズの真価がより鮮明に浮かび上がってきたと感じている。プロランナーではなく、様々な条件下の山で仕事をするものとしてこのシューズの良し悪しをお伝えできればと思っている。

PRODIGIOに出会って

この一年たくさん走らせてもらったPRODIGIO

私は以前AKASHAを使用していた。AKASHAもオールラウンドに使用できる良いシューズだと思っている。そんなAKASHAもだいぶ使い込んでしまったので、今回より良いシューズに出会えないかと思い、新たにPRODIGIOを導入してみたのである。

まず、PRODIGIOを手にとって感じたことは明らかにAKASHAよりも軽いということだ。
300gを超えたモデルはいくつか履いたことがあるが300gを切った270gのシューズを履くのは初めてだった。数十gという差ではあるが、体感として感じ取れるぐらい軽さが際立っていた。

ランニングカメラマンにしろ撮影歩荷にしろ軽くなるというのは嬉しいことだ。山の中での仕事において体への負担をいかに軽減するかはとても重要な要素の一つだと思っている。その為になるべく軽い装備を整えるということを日々考えている。
ただ、軽ければ良いというものではない。軽くなっても生地の耐久性や、不整地に耐えることができるソールの堅牢性は落としたくない。これだけ軽くなったPRODIGIOがどれだけその要望に応えてくれるのか、そこが一番気になるところだった。

私の場合、仕事の場面によって使用環境が大きく異なってしまうが、それに合わせて毎回毎回シューズを変えていく余裕はない。軽く、そして汎用性の高いシューズ。それが私の求めているシューズだ。
少々わがままな要望にはなるのだがPRODIGIOを手にとってみてこのシューズがその要望に一番近いのではないかと感じた。だから実際に履いてみてどんなパフォーマンスを発揮してくれるのかとても楽しみになった。

こんな環境だからこそ軽量化して挑みたい

ランニングカメラマンに求められるシューズ

私は、国内のトレイルランニングのレースや海外でのトレイルランニングのレース、また海外でのアドベンチャーレースのランニングカメラマンとして今まで撮影を行ってきた。
撮影が入るものの多くは、100kmや100マイル、それ以上の長いものが多い。撮影が始まると選手に長時間ついて行ったり、選手が来るのを先回りして待っていたりを繰り返すことになる。。どれだけの距離を追うのか誰を追うのか、それはレースの進捗によって刻々と変わっていく。

トップ選手に食らいつきながら撮ることもあれば、疲れた選手に寄り添うように撮ることもある。また、長いレースになると天候が安定しているとは限らない。照り付ける日差しの中を進むこともあれば、突然の雨に晒されることもある。走る場所も、綺麗な土のトレイルであったり、岩場が連続したりと様々だ。どんな状況においても撮影は続いていく。

それに耐えうるシューズ、より快適に履き続けられるシューズが必要になるのだ。

景色をおさめるために立ち止まることも多い

私がそういった撮影に関わっていく中で気になっていたのが、雨の中で撮影を行った際のシューズの濡れだった。
登山、トレイルランニング、いずれにおいても切っても切り離せない濡れの問題、まずはそこについてPRODIGIOを履いてみての私なりの感想を述べていきたいと思う。

撮影の中で選手について行くとなると、防水性の高い重量のある登山靴ではついて行くことができないため、選手たちと同等クラスのトレイルランニング用のシューズを履くことになる。

雨が降ればレインウェアを着ていてもシューズは次第に濡れていく。また、雨あがりの水たまりや沢を超えていく場所で濡れを避けられない場合もある。シューズが濡れてしまうと、不快感だけでなく靴擦れの原因にもなる。雨の中選手を待つことになれば足元からの冷えも軽視することができない。濡れて乾きにくいということは数日にわたる撮影に置いて決していいことではない。
乾いた予備のシューズに履き替えるタイミングがあれば良いが、撮影を行っている中ではその時間すらないことも多い。

そうなってくるとシューズが濡れに強い必要がある。濡れに強いというのは、私は乾きが良いことだと思っている。
様々な原因で濡れる可能性があるレースの撮影においては乾きの良さが、足への負担を大きく変えるのだ。

以前、AKASHAを使用していた際はその辺りが少し気になるところだった。AKASHAは踵周りやアッパーにクッション性の良い生地を使用していて履いている際の快適性は高かったのだが、雨などで濡れてしまった時に水分を多く含みやすいという難点があった。染み込む部分が多いということは、その分乾きも悪くなるということだ。

とはいえ、どんなシューズも外からの濡れと汗などによる中からの濡れがあり、完全に乾いた状態で走り続けることはできないので、ある今まではそういうものだと思ってシューズを履いていた。ある程度は仕方ないと受け入れなければならない。だが、今回PRODIGIOを導入して感じたのは濡れに強いということだ。

PRODIGIOは踵からアッパーにかけての生地がかなり薄めに設定されている。これは本来軽さを求めるためであると思うのだが、濡れに対しても非常に良い効果を発揮している。
わかりやすい事ではあるのだが、薄くなったぶん水はけが良く、乾きが圧倒的に早い。また、水を含む部分が少ないため、水たまりに思いっきり足を突っ込んでしまったとしても、グチャグチャとびしょ濡れになった感じがしにくいのである。
雨の中の撮影で使用した際に、これはいいなと素直に感じさせられた。私にとって濡れに強いこのPRODIGIOに出会えたのは大きな収穫だった。

追いかける時はシューズを信頼して進む

では、濡れに関して以外の部分はどうなのかという点にも触れていきたいと思う。

PRODIGIOはウルトラトレイル向けに作られたシューズだ。整備されていない林道や登山道を長距離走り抜ける、ロングディスタンスレース向けの仕様になっている。軽さを重視したモデルにありがちな、不整地や岩場に弱いというのは今のところ感じていない。
それは必要な部分の堅牢性やクッション性は残しつつ、なくても困らない部分をうまく軽量化しているからだろう。

また、ラッピングシステムによって足へのフィット感が増し安定性も感じられる。カメラを片手に追いかけなければならないランニングカメラマンではこのフィット感も重要な要素の一つだ。
カメラのモニターを気にしつつ、選手を追いかける際は選手ほど足元に気を配る事はできない。多少強引にトレイルを突き進むことも少なくはない。軽く、そしてフィット感の高いシューズがそれをサポートしてくれるのだと感じている。
そういった意味で、PRODIGIOはそれをより高い次元で実現してくれる新しいシューズだと思う。

重荷を背負う歩荷の現場

次に、ここではまた少し違う環境となる歩荷の仕事の場面でPRODIGIOを使った感想を述べたいと思う。

もともと走るために作られているトレイルランニングシューズであるので、本来の用途とはずれてしまう部分もあるのだが、私は歩荷の仕事において頻繁にトレイルランニングシューズを用いている。

歩荷というのは、重荷を背負って登山道を歩き荷物を山小屋などに届ける仕事になるのだが、私の場合テレビ番組等の撮影隊に同行し機材を運搬する歩荷を行っている。自分のペースで荷物を届ける歩荷とは違い、撮影状況に応じてペースが決まっていく。
自然を相手に撮る場合、太陽の光や天候を考慮して進むことも多い。少し急いで目的地に到達しなければならないこともある。また、日帰りの連続であったり、山小屋での宿泊を伴う場合もある。重荷を背負っていてもコースタイム以上のタイムで上がって行くことも珍しくない。

そういった変化の多い撮影現場において取り回しのきくシューズは重宝するのである。速い移動がある場合、やはり足元が軽い方が楽になるのだ。
もちろん雪山でトレイルランニング用のシューズというわけにはいかないのだが、撮影内容に応じて軽いシューズを選択肢に入れているのだ。

その一つとしてこの1年はPRODIGIOを積極的に使用してみた。
私がよくPRODIGIOを使用したのは、日帰りで速い移動が求められる行程の場合や、天候があまり良くなく濡れてもすぐにシューズが乾いて欲しい場合だ。この点においては、ランニングカメラマンのところでもお話したようにPRODIGIOの性能を存分に発揮してもらうことができた。

ただ、ランニングカメラマンと異なるのは背負っている荷物が非常に重いということだ。当然ながら、その重さの影響は履いているシューズにも出る。
登山靴と比べて柔らかいソール(足裏が曲げやすい)を設定しているトレイルランニング用のシューズは重荷を背負って歩く場合どうしても岩の角などに荷重を乗せた時に食い込みが強くなってしまう。
これは、重荷で歩く場合は真下に荷重する踏み足が基本となるからでもある。慣れていないと逆に不安定に感じ、足裏の疲労に繋がってしまうように感じる。

また、乾きのメリットにもなっているアッパーの薄さは打撃に弱いという一面もある。
重荷を背負っている場合、どうしても一歩に力が入ってしまう。木の根や岩に軽くぶつけるだけでもそこそこ痛いのである。

ただ、これはあくまで本来の用途とは異なる歩荷で使用した場合の話であるので、PRODIGIOの性能の問題ではない。場面場面に応じてシューズを選択し、それを使いこなすということが大事なのだと思う。

スピード、重荷を背負う馬力、その両方を求められる撮影歩荷においてはシューズの良いところを理解し使い分けることが求められているようにも感じている。
トレイルランニングと恐らく対極となる撮影歩荷で使用していることに違和感を感じる人もいるかもしれないが、良い撮影にするためには多少のデメリットがあったとしてもより機動力を求められることがあって、私はそれに答えられるシューズを選択しているということなのだ。

信頼のシューズだからこそ安心して山に向かえる

本当の真価を発揮する場所

歩荷の仕事での使用ということで少し脱線したかもしれないが、ウルトラトレイル用とはいえ用途は様々なように感じている。
そういった中で、私が使用してきた中で最も活躍してくれたのは、やはり100kmや100マイルのロングディスタンスレースだった。

昨夏経験した100kmの海外レースではコースの最高標高が4700mに達していた。これだけの高所となると数gでも軽くして撮影に挑む必要がある。私自身6000m近いヒマラヤでの登山も経験したことがあるが、高所での重さの影響は地上の比ではない。

これは選手も同じではあるが少しでも軽くしていくことがパフォーマンスを最大限に発揮する鍵になる。PRODIGIOの軽さは空気の薄い環境において本当にありがたいものだった。

標高も環境も様々な山岳地帯における長距離レースにおいて、濡れへの強さや軽さがほんのわずかでも良くなっているだけで、それが結果に繋がっていくのだと思う。そんな要望に答えてくれるのがPRODIGIOなのではないかと思う。

私はプロランナーではないし、レースに出場することもない。でも、同じ場所で一緒になって走って撮影をしていく中で、少しでもくらいついていけたらと思っている。

私が関わるのはレースの中でもほんの一部に過ぎないが、選手たちが全力を投じる場所で私も全力で撮影に取り組めたらそれは嬉しいことだ。そして、そのためには相棒となるシューズが必要なのだ。

2024年は海外でのアドベンチャーレースや100kmレース、国内の100マイルレースと大きなレースでの撮影が続いた。
過酷な環境で昼夜を問わず、天候を問わず行われるロングディスタンスレースの撮影にも耐え抜いてくれたPRODIGIOは私の新たな相棒になったと思う。

新たな相棒となったPRODIGIO

WRITTER

ランニングカメラマン

石川 貴大 Takahiro Ishikawa

「里山からヒマラヤまで」国内外フィールドを問わず活動を行っている登山ガイド兼カメラマン。
山での機動力を活かした山岳撮影やトレイルランニングレースの撮影、撮影歩荷を行っている。
プライベートでは登山、クライミング、海外登山等、幅広く経験を積みながら山を楽しんでいる。
地元静岡ではリバーガイドとしても活動しており、山だけに限らず年間を通じて自然と関わり続けている。

PRODUCTS INFORMATION

SKWAMA

PRODIGIO
プロディジオ

La Sportiva初のウルトラトレイル専用NEWモデル